よく「低炭素社会」というが、一体どんな社会になるのだろうか。きっと社会や経済の姿は、がらりと変わるに違いない。とすれば、それほどの社会の変革を実現するには、何か得体の知れない大きな力が必要になるはずである。それは政治の力であったり、あるいは教育の力であったりもする。
普段なかなか気付かないのであるが、実は、その大きな力の一つが「金融」なのである。なぜならば、金融は投資や融資を通じて新しいビジネスを助け、産業構造の変革を促進し、やがては経済のあり方を根本から変えていく。金融を通じて流れるお金はそんなパワーを持っているのである。
そのことは、戦後の日本の高度経済成長の過程を振り返れば、よくわかる。戦災で灰燼(かいじん)に帰した我が国が見事に復興し、高度成長を遂げ、国内総生産(GDP)世界第2位にまで発展した背景には、さまざまな理由がある。まず、産業界による多大な努力があったことは言うまでもない。が、忘れてならないのは金融の果たした役割である。
限られた資金をいかに有効に使うか、文字通り金融に課せられた責任は大きかった。その金融が期待通りの役割を果たしたからこそ、「東洋の奇跡」といわれた日本の大躍進があったのである。お金がどの分野に、どのように流れるかで、社会のあり方、経済のあり方は変わるということがわかる生きた教材といえるだろう。
その金融の潜在的パワーに、今、世界では大いなる注目が集まっている。地球温暖化問題は深刻さを増す一方で、その解決へのめどが立たない。そんななか、金融の持つ力を活用しようという動きが強くなってきたのである。
金融を通じたお金の流れが変われば、問題解決の糸口がつかめるのではないのか。考えてもみよう。金融が扱うお金は、市民が銀行に預けたお金ではないか。年金基金に積み立てられているお金は、年金加入者、つまり市民のお金ではないか。とすれば、それらのお金は金融のものではなく、市民のお金、つまりは「社会のお金」である。その社会のお金こそ、社会のために使ってほしい。そう願うのは誰にとっても当たり前の話ではなかろうか。金融を通じて流れる社会のお金を、もっと地球環境を守る方向へとハンドルを切り替えさせよう。世界はそう思い始めたのである。