低炭素な社会づくりを進める時、第一歩として、まずは市民自身が「自分たちの街」をどのような存在にしたいかを考えることが重要である。その良い例となるのが欧州の動きだ。
欧州ではグリーンな街づくりへの変革が進んでいる。温暖化、公害など環境問題に直面するなかで、「自分たちの街」「自分たちのコミュニティー」はどうあるべきかを考え、議論し、新しい仕組みをつくり出しているのだ。
1980年代から「パーク&ライド」を取り入れた都市として有名なのはドイツのフライブルクである。スイスとフランスの国境沿いにあり、中世のたたずまいが残る美しいこの街で、クルマ依存からの脱却と公共交通機関の利用拡大を目指し、パーク&ライドを採用した。パーク&ライドとは、街の郊外や公共交通機関の駅に無料の駐車場があり、利用者はクルマをその駐車場に駐車し、街の中心部に行くには電車など公共交通機関に乗り換えるという仕組みだ。また、公共交通機関のための「環境定期」を安く発売。日曜日などには家族までタダで一緒に乗れる特典付きだ。
「パーク&ライド」を導入したきっかけは環境問題だった。ドイツには「黒い森(シュヴァルツヴァルト)」と呼ばれる森林地帯がある。ドイツ市民は歴史的に、この鬱蒼(うっそう)とした森と共生してきた。森で取れるドングリの実で豚を育てるから、ドイツでは牛肉料理より豚肉料理へのなじみが深い。ソーセージやハムなど豚肉を使った食品が発達しているのも、そのためだ。休日には何時間もかけて森の散策を楽しむ人が多い。ドイツ人にとって、森は生活の一部であり、かけがえのない存在である。
ところが、その「黒い森」が酸性雨の被害を受けて立ち枯れていった。酸性雨の原因は工場や自動車による大気汚染。生活の利便性を高めるために自分たちが乗り回していた自動車が排ガスをまき散らし、何百年と続いてきた欧州の黒い森を壊し始めたと知り、フライブルク市民は「従来通りの生活スタイルを続けていいのか」と考えた。
その結果、出てきたのが自動車の乗り方を変え、街の中心部にクルマで乗り入れるのをやめようというアイデアだった。街の中心部には駐車場が十分にはないし、クルマがたくさん乗り入れれば排ガスのほかに騒音も発生する。郊外にクルマを駐車して電車で来てもらえば、排気ガスの問題も、渋滞や騒音の問題も解決できると考えた。