COP10へ企業の取り組みが活発にビジネスと生物多様性の関連を探求
今年10月に名古屋で「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)が開催される。わが国が議長国を務めるとあって、政府はもちろん企業も生物多様性への取り組みに力が入ってきた。植樹、里山保全など社会貢献活動からステップアップし、事業活動と生物多様性の関連を意識した新しい角度からの活動をCSRリポートなどで訴える企業が相次ぐ。生物多様性が事業活動とどう関連し意味を持つのか。COP10の重要テーマに焦点を当ててみたい。

事業活動のミスで生態系にインパクトを与えた事故が企業に莫大な代償を迫る。その最新例がメキシコ湾沿岸を襲った原油流出事故だ。オバマ米大統領が陣頭に立っての対策でも流出はなかなか止まらない。ルイジアナ州にはミシシッピ川河口の湿地帯があり貴重な鳥類、漁業資源に富んだ野生動物保護区もある。石油掘削の英BP社は復旧費用、漁業者への補償に加えて生態系回復へ1兆円を超す膨大なコストの負担を言明した。

民間参画ガイドラインで示す取り組みのポイント

この事故で痛感するのは「ビジネスと生物多様性」の関連がいかに大切かである。COP10の重要なテーマの一つとして生物多様性への民間参画推進が話し合われる。そこで環境省は昨年、民間参画のガイドラインを作成、普及に努めている。環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室室長補佐の鈴木渉氏は「生態系が危機に瀕している現状を企業が放置していれば、自然も企業も共倒れになる」と警告する。確かに地球規模で見た生態系の衰退はすさまじい(グラフ1)。

グラフ1:加速する、種の絶滅速度
世界中の1300種以上の野生生物の生息状況を指数化したもの。環境の豊かさがどれくらい失われたかを示す。地域、淡水、海洋の3つの指数の平均。基準となる1970年以降、その数値は30%減少している。

事業者はどのように取り組みを進めればよいのだろう。事業者は生物多様性と持続可能な利用に関する方針( 理念)を決め、自社の事業が生物多様性からどんな恩恵を受けているのか、あるいは生物多様性にどのような影響を与えているのかをよく認識することから始める。重要なのは取引先などサプライチェーンとの協力関係も視野に入れること、ビジネスと生物多様性の問題は環境部、CSR部だけでは対処できない経営判断があるため、「トップマネジメントが推進に関与する」(鈴木氏)ことがポイントになる。活動の評価を外部ステークホルダーから聴き、その結果を社会・環境報告書やCSRリポートなどを通じて公開するのは言うまでもない。

CSRの比重高める生態系の保全業種で異なるグリーン調達の難易度

企業がCSRリポートに記述する環境対策として地球温暖化防止に多くの紙数を割いてきた。しかしここにきて生物多様性を強調する企業が増えているのは、生物多様性がCOP10の開催でクローズアップされ、CSRにおける比重が高まったためだ。凸版印刷、三菱電機、大阪ガスなどが基本方針の策定を明らかにした。各社は基本方針のもと具体的な活動内容を列挙しているが、目立つのはサプライチェーンにおいて生物多様性に配慮したグリーン調達を推進すること、生物多様性の保全と温暖化防止のバランスを考えること、リサイクルと関連させることなどである。

グリーン調達ではミサワホームが木材調達ガイドラインを策定、森林資源を乱開発などから守る森林認証を得た木材を購入する。2014年度までに森林認証を受けた木材の使用比率を70%に高める。同様の木材調達ガイドラインは積水ハウスも採用しており、木質系ハウジングメーカー、サプライヤー双方にとって、第三者機関の森林認証は説得力のある指標といえる。

一方、サプライヤーに客観的なガイドラインを示すのが難しい業種も少なくない。完成品メーカーは部材メーカーからの調達に当たって品質管理、CO2(二酸化炭素)排出量管理、化学物質管理などに関する第三者機関の評価を使うことが多いが、生物多様性については初歩から学ばなければならないサプライヤーがほとんどだ。