花澤裕二、鈴木裕美(日経エコロジー)
この4月、東京都で本格的なキャップ&トレードが動き出す。対象となる企業からは戸惑いと焦りの声が相次いでいる。企業本社やオフィスビル事業者や商業施設などで対応のための動きが始まっている。
“生グリーン電力”で枠を確保
現場は大わらわだ。住友不動産は、「これまで環境分野は専門の担当部署がなく、ビル事業本部で兼務していた。今も、担当が1人で全テナントに説明に回っている」と話す。「今から1.3倍のペナルティに備えて予算を確保する」と義務の達成を諦めた企業もある。
そんな中、三菱地所はいち早く対応を発表し、注目を集めた。“生グリーン電力”の購入で6%の削減義務を達成するというものだ。
生グリーン電力とは、風力などCO2排出ゼロの自然エネルギーで作った電力を「同時・同量」の条件で託送することで、実際に使っているとみなすもの。都の制度では、太陽光、風力、地熱、小水力による電力であれば購入量の1.5倍の電力を削減したと認められる。

三菱地所はオフィスと商業施設が入居する「新丸の内ビルディング」で使う年間約2万tの電力をすべて生グリーン電力で賄う。「グリーン電力証書は急騰する可能性があり、必要なときに調達できないかもしれない」(都市計画事業室の井上成副室長)との懸念が計画を後押しした。これで、削減義務は達成でき、さらに余剰排出枠も生まれる。この余剰分はグループ内のほかのビルに配分し、全社で義務を達成したい考えだ。
ここまで大胆な対応策は珍しい。他社は、空調や照明のコントロールといった地道な努力が基本だ。
日本橋や新宿の店舗が削減義務の対象となる高島屋では、全国18店で発光ダイオード(LED)照明を導入する。CO2排出量の多い演出照明を順次、置き換えていく予定だ。照明からの発熱が少なくなり、空調効果も高まるため、18店全体で7.2%のCO2削減効果が見込まれるという。
高島屋の試算によれば、例えば日本橋の「東京店」の場合、都の制度における基準排出量は1万6800tで、8%の削減義務を負う。LEDの導入のほか老朽化した設備も更新し、照明器具の対策で約150t、夏の店内温度の緩和など空調器具の対策で約130t、エレベーターなど昇降機の入れ換えなどで数十t の削減を予定している。

森ビルは都の制度に対応するため、昨年7月、急きょ9部門から70人を集めたプロジェクトチームを発足。削減計画の立案や、義務率が軽減されるトップレベル事業所の認定要件などを検討した結果、これまで続けてきた削減策の徹底で、都内14事業所のうち5事業所前後は削減義務を乗り切れると予想している。
そのほかの事業所は、エネルギー消費量が多い空調と照明の省エネを徹底的に進めるしかない。例えば、空調の湿度コントロール。パラメーターを調整するだけで、夏に室内の設定温度を多少上げても快適に過ごせるという。照明をこまめに消せるように、スイッチ周りにフロアの見取り図を掲示し、どのスイッチがどこの照明に対応しているかがひと目でわかるようにするなど、様々な省エネ対策を積み重ねる。



















