ECO JAPAN特集

2010年1月25日

日本発のEV元年とパラダイムシフト 世界を制する条件を占う

対談:清水和夫×中西孝樹 2010年 エコカー展望(後編)

構成・文/林愛子、写真/蔦林幸子

今年の話題のひとつは、日産自動車が「初年度目標5万台」を掲げる電気自動車「リーフ」の発売だ。本格販売が始まる2010年は電気自動車元年と言っていい。しかし、喫緊の地球環境問題を考えれば電気自動車だけに頼るわけにはいかない。航続距離が短く、まだまだコストが高い現状では普及にも限りがある。今後爆発的に増える途上国のニーズに答えつつ、全体の環境負荷をどれだけ抑えられるかが、自動車の世界戦略で問われているのだ。“環境”と“途上国”の2大キーワードで大転換を迫られる自動車産業のこれからの姿を、モータージャーナリストの清水和夫氏と自動車アナリストの中西孝樹氏が探る「2010年 エコカー展望」の後編をお送りする。

(前編はこちら)

守りの日本、攻めのドイツ

モータージャーナリスト 清水 和夫(しみず・かずお)氏
1954年生まれ。プロフェッショナルなレースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして活動を行っている。ドライビングを科学的に分析する能力はクルマの正確な評価にも生かされ、シャープな論評は支持者が多い。ECO JAPANにてコラム「人とクルマと地球の良い関係!」を連載。

清水和夫氏(以下、敬称略): 2009年の日本市場を振り返ると、ハイブリッド車以外に魅力あるクルマがなかったという印象です。政策の後押しもあってハイブリッド車は確かに売れましたが、エコカー減税など一連の政策は200万円以上する高級車が対象ですからね。ハイブリッド車はこんな経済状況下で支援するべきクルマじゃなかったと思っています。だから日本ではハイブリッド以外のエコ技術が出てきていないし、戦略的に攻めているようにも見えない。

 日本の自動車メーカーの多くは09年の米国デトロイトモーターショーへの出展を取りやめ、首脳陣も会場入りしませんでした。それとは対照的に、ドイツなど欧州のメーカーは危機的状況にある米国自動車業界に対して応援団を送り込んだ。危機に対して攻めたドイツと、守りに徹した日本という印象でした。

 欧州メーカーは常にそれぞれのマーケットで、どんなクルマを売っていくべきか、クルマの製品としての魅力を戦略的かつ冷静に考えています。日本メーカーは同じものを高品質で均一に製造するフォーディズムに長けていますが、もはやそれでは立ち行かない。数の論理ではなく、マーケットごとの価値を見ていくべきでしょう。

自動車アナリスト 中西 孝樹(なかにし・たかき)氏
オレゴン大学ビジネス学部卒。1987年、東京証券入社。山一證券、メリルリンチ日本証券などを経て、2006年にJPモルガン証券に入社。自動車担当アナリスト兼株式調査部長として活躍。09年8月、アライアンス・バーンスタインに入社し、株式調査部長、アライアンス株式運用・調査本部シニア・ヴァイス・プレジデントに就任。現在に至る。

中西孝樹氏(以下、敬称略): 日本ではハイブリッド車が大ヒットしましたが、非常に高価な技術だけにほかの国では売りにくいそうです。補助金がなくなったあと、日本に果たして何が残るでしょうか。

 現状ではエコカーの定義は幅広く、ハイブリッド車もあれば、電気自動車(EV)もプラグインハイブリッド車もあるし、アイドリングストップなどの要素技術もあるという状況です。そのなかで地球環境全体に対して、総合的にクルマのエコを実現するにはどうしたらいいかと言えば、技術の方向性としては、ダウンサイジングが重要だと思いますね。小さなクルマをつくることで、企業として収益を上げながら、途上国を含むあらゆる国の人々に喜んでもらう。地球環境の維持にはどこでも喜ばれるクルマの提供がより大切になってくると思います。

1 2 | 3 | 4 | 5 |

電気自動車元年 >>

復興日本

聴くエコマム

High Ecology Low Carbon 創エネ住宅の時代へ

東京国際環境会議2011

グリーンテクノロジー&マネジメントシンポジウム2010

ecomom 国際森林年