気候変動の影響を受け、気温上昇や旱魃の増加などに直面している中国。一方で、国際社会からは、強力な対策を講じることを求められる温暖化ガスの最大排出国でもある。その実情と対策について、氷河・気候学の専門家として、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第1作業部会(WG1=気候変動予測)共同議長を務める秦大河氏が明らかにした。
秦 大河 氏
元中国気象局局長(大臣) 中国科学院院士
降水分布に変化
熱波と旱魃が増加
地球温暖化は、疑いのない事実であり、中国の気候も、地球全体で進んでいる温暖化の傾向と大体において一致している。中国気象局国家気候センターのデータによると、1908年から2007年までの100年間で、中国の地表平均気温は1.1度上昇したが、過去50年間ではその傾向が顕著になり、特に大きな影響が出ている北方地区では、気温の上昇幅は4度に達している。

こうした変化は気温上昇にとどまらない。降水分布を見ると、過去50年で、西部地区での降水量は約15〜50%増加。一方で、華北と東北の大部分では約10〜30%減少している。現在の予測では、年平均降水量は中国全土で、2050年までに2〜5%、今世紀末までに6〜14%増加する可能性がある。
極端な気候災害も変化が顕著で、発生頻度が高まりその強度も増している。1つは夏季における熱波の増加。特に1998年以降は、35度以上の猛暑日の連続日数が平年より多くなっている。また地域性の旱魃もひどくなっており、華北地区では、旱魃の発生頻度と範囲、損失が、1886年以降で最も深刻になっている。豪雨も増え、ここ20年は長江と淮河流域での洪水災害が頻発している。年平均の直接経済損失は1250億元(約1兆6200億円)を上回る。
中国は気候変動による悪影響を最も受けやすい国の1つで、農畜産業や森林、自然生態系、水資源や海岸帯などに既に現れている。例えば、農業生産の不安定性は高まっており、高温化により局地的な旱魃時の脅威が深刻になっている。また温暖化によって農作物の発育時期が早まり、早春の冷害被害が増大するなど、気候災害は農畜産業の損失を増大させている。
この影響は将来的にも収まりそうもない。小麦と水稲、とうもろこしの3大作物は、いずれも生産高が減る可能性がある。土壌の有機質の分解速度は速くなり、農作物への病虫害の出現する範囲は拡大する可能性がある。また、草原の潜在的な砂漠化の傾向が激しさを増し、野外での火災の発生頻度は増加の勢いを強めている。畜産に関しても、繁殖能力への影響や疫病の発生リスクが高まることなどが懸念されている。森林やそのほかの自然生態システム、水資源などへの影響も見逃せない。



















