東京大学サステイナビリティ学連携研究機構 特任教授=村沢義久
「25%削減」批判は認識不足
民主党は、8月30日に行われた衆議院選挙向けのマニフェストの中で、2020年までにCO2などの温室効果ガスの排出量を90年比で25%削減することを表明し、9月7日に、これを国際公約にすると発表した。これは、以前自公政権が掲げた8%(2005年比15%)から大幅なアップであり、産業界に「25%ショック」が駆けめぐることになった。
反対の声は少なくない。中には、「荒唐無稽」と称する経営者もいる。しかし、そういう反応こそ重大な認識不足と言わざるを得ない。民主党の方針にかかわらず、CO2の大幅削減は世界レベルですでに合意されていることなのである。
今年7月にイタリア、ラクイラで開催されたG8サミットで、2050年までに先進国全体で温暖化ガスを80%削減することで合意している。民主党の「25%削減」は「80%削減」への通過点でしかないことを忘れてはならない。我々人類は地球温暖化の脅威に対して全面戦争を開始したのである。反対意見を持つ人たちには危機感が乏しいように感じられる。これは残念なことである。
25%削減だけでも容易ではないが、80%となると尋常のやり方で達成できないことははっきりしている。省エネで5%、住宅の断熱向上で3%という積み上げだけでは到底80%削減には到達できない。また、セクターごとに割り振るというやり方にも限界がある。
例えば、製鉄やセメント製造にはプロセス上どうしてもCO2が発生してしまう。これらの部門に無理に削減を割り振れば日本では継続できないことになるし、海外に脱出しても地球レベルでのCO2削減には役立たない。このように、大幅な削減が難しい分野が残るから、可能な分野では「100%削減」を目指すことが必要になる。
となれば、ここは180度の発想の転換が必要だ。CO2の「排出を減らす」のではなく、最初から「排出しない」社会を目指すのである。それは「燃やす文明」から「燃やさない文明」への大転換である。「燃やさない文明」とは、電気をエネルギー体系の中心に据える文明であり、我々が現在持っている技術で直ちに実現可能である。
その2本柱は自動車の全面的な電気化と、「燃やさない発電」への転換である。これだけで、最大50%のCO2削減が可能であり、しかも、どちらも日本がリーダーシップを発揮できる分野である。
CO2の大幅削減は国際競争力の観点からも国益にかなっているのだ。「民主党案を推進すると1世帯あたりの負担が36万円になる」という試算が発表されているが、あまり意味のある数字とは言えない。確かに、負担が生じることは間違いないが、投資による大きなプラス効果を忘れてはならない。





















