ECO JAPANリポート

2011年10月14日

FUKUSHIMAの本質を問う【2】届かなかった専門家の提言

東京工業大学原子炉工学研究所の飯尾俊二准教授に聞く

聞き手/文 林愛子

福島第一原子力発電所事故を第三者的な立場から調査する「FUKUSHIMAプロジェクト」。前回は、同プロジェクト委員長の山口栄一教授(同志社大学ITEC副センター長)から、「原発事故は技術経営のミスに起因するもので、天災でも偶然でもなく、100%予見可能な事故だった」と指摘してもらった。
今回は、原子力およびエネルギーの専門家として参加する、東京工業大学原子炉工学研究所の飯尾俊二准教授に聞く。飯尾准教授は、津波対策の不備を指摘するとともに「初期段階から世界の叡智を集めて対応していれば、結果は違ったのではないか」との見解を示す。FUKUSHIMAプロジェクトでは、原発事故の問題点を明らかにするとともに、これからのエネルギーの在り方について二酸化炭素の地球温暖化主因説から離れた提言を発する予定だ。


――今回、東京電力は“想定外”の津波だったとしていますが、巨大津波の可能性は何年も前から専門家によって指摘されていたようですね。

飯尾俊二(いいお・しゅんじ)氏
東京工業大学原子炉工学研究所 准教授

飯尾俊二准教授(以下敬称略) はい。専門家の指摘を受けていながら、津波に対して十分な備えがなかったことは極めて大きな問題だと思います。

 東京電力は津波の最高位を5.7mと想定していました。原発の敷地は海抜10mですから、想定よりも少々大きい津波が来ても浸水の心配はないと、対策を採っていなかったようです。3月11日の津波は想定値の2倍以上の約15mでしたから、これほど大規模な津波は“想定外”だった――というのが東京電力の主張です。

 しかし、産業技術総合研究所の活断層・地震研究センター海溝型地震履歴研究チーム長である宍倉正展氏らは869年の貞観地震の研究に基づき、巨大津波が押し寄せる可能性を以前から指摘していました。2009年には産総研の活断層・地震研究センター長の岡村行信氏が東京電力の担当者も出席する経済産業省の審議会の席で、そのことを指摘しています。つまり、東京電力は津波の可能性を知りながら何も手を打たなかったわけです。

――東京電力はどのような津波対策を採るべきだったでしょうか。

飯尾 まずは防潮堤です。今回の津波は岩手県宮古市の「日本一の防潮堤」を破壊しましたから、完全な防護は無理だったかもしれませんが、やはり造っておくべきでした。

 電源対策はもっと重要です。1号機から4号機の電源盤や非常用ディーゼル発電機は原子炉建屋よりも海側に建てられたタービン建屋の低い場所に置かれていたため、津波で全滅しました。原発の施設は重要度に応じた耐震設計審査指針が設定されていて、タービン建屋は耐震安全性評価クラスBです。もし電源盤や発電機が原子炉建屋(耐震安全性評価が最高レベル)内部に水密性が保たれた状態で置かれていたら、電源喪失を回避できた可能性は高かったと思います。

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