ECO JAPANリポート

2011年2月17日

アジアで蔓延する鳥インフルエンザ、生物多様性の減少も影響

松波登記臣(獣医師)

 アジア諸国には多くの感染症が存在している。ウイルス、細菌、寄生虫、真菌などが原因として挙げられる。人に感染するもの、動物に感染するもの、両方に感染するものがあり、その数は膨大だ。食中毒で有名な「ノロウイルス」、昨年日本を襲った「口蹄疫ウイルス」、そしてアジアで最も死亡者数が多い「狂犬病ウイルス」など、名前を挙げだしたらキリがない。

シベリアから野鳥がウイルスを持ち込む

 昨年から日本で発生している「高病原性鳥インフルエンザ」(以下、鳥インフルエンザ)もアジア諸国で大発生している感染症の1つである。11月末に島根県安来市の養鶏場で発生したのを皮切りに、12月に入って富山県、鳥取県に広がった。さらに国内最大の越冬地である鹿児島県出水では、国の特別天然記念物であるナベヅルなど野鳥からも鳥インフルエンザウイルスが検出された。さらに今年に入ってからは、鹿児島県、愛知県、大分県まで被害は及び、宮崎県の養鶏場では継続的に感染が見つかった。

 被害が起きた地域では、早期の感染症の封じ込めを図ろうと、私の仲間である獣医師たちが現場で作業に従事している。彼らの懸命な取り組みにより、1日も早い事態の終息が望まれる。

 動物衛生研究所(茨城県つくば市)の調査によると、これら鳥インフルエンザウイルス型は「H5N1型」と判明した。昨年10月に北海道稚内市大沼の野生のカモから検出されたウイルス型と一致したため、日本を飛来地とする渡り鳥のハクチョウやマガモが、鳥インフルエンザウイルスをシベリアから北海道に持ち込み、南下したと推測されている(農水省)。

 現在、日本で発生している鳥インフルエンザのウイルス型はすべてH5N1型であり、各県で検出されているウイルスの遺伝子配列も99%以上で一致している。シベリア西部・中部・東部でもH5N1型しか見つかっていないことから、汚染源はシベリアであると考えられている(Shestopalov et al., 2006, Liang et al., 2010)。

 これまで、渡り鳥は秋頃にシベリアを飛び立った後、中国北東部を中継地点として、日本に飛来してくると考えられてきた。しかし、昨年の場合は10月14日という早い時期に北海道に着いた。また、昨年秋の時点では韓国や中国でH5N1型の発生報告がないことからも、中国を経由せず、シベリアから直接日本に飛来したと考えられている(環境省)。

 今回の鳥インフルエンザが日本に持ち込まれた経緯に関しては、様々な憶測がなされているが、現在多くの研究者らが、この問題に取り組んでいることから、正確なデータが出るまでに時間はそうかからないはずだ。感染ルートを探し出すことは、将来の対策立案に寄与するだろう。

 しかし相手は野生動物であり、世界中を飛び回る渡り鳥たちだ。アジア諸国に存在する感染症は膨大である。病原体たちは人間を嘲笑うかのように、今後猛威を振るう可能性がある。

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気候の変化が感染症の発生に影響 >>

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