高まる企業の責任 COP10後の生物多様性

2010年10月18日

COP10後のシナリオ(2) 生態系サービスの利用に代価を支払う動きが広がる

 COP10以降、生物多様性保全への企業の取り組み方として注目されそうなものの1つが、PESだ。「生態系サービスへの支払い」と呼ばれる。

 人間の生活や企業活動の多くは、生態系が提供するサービスに依存している。生態系は食料や木材など様々な生物資源を提供したり、気候を一定に保ったり、水や空気を浄化したりしている。これらを生態系サービスと呼ぶ。生物多様性の保全なしには得られないものである。

 自分たちが利用している生態系サービスの対価や、サービスを持続可能な形で利用するための保全活動に必要なコストを直接支払う──これがPESの考え方だ。COP10では、生物多様性の保全への企業のかかわり方の一形態としてPESを紹介し、奨励する見込みだ。

 森林やサンゴ礁、野生動物の保護活動に広く寄付するといった企業活動は従来からあった。PESは、自分たちが直接恩恵を受けている生態系サービスに着目し、その受益幅に応じて受益者が費用を負担しようという点で、より経済合理性が明確になっている。

 PESの好例としてよく挙げられるのが、フランスのミネラルウオーター「ヴィッテル」の事例だ。ヴィッテルはフランス北東部にある源泉から採水したミネラルウオーターだが、1980年代、水源が農薬や硝酸塩で汚染され、ナチュラルミネラルウオーターとうたって販売することができなくなる恐れが出てきた。

 そこでヴィッテルは水源周辺の農家と話し合い、水源を汚染しないように配慮した農法に取り組んでもらう代わりに、その費用を補てんすることにしたのである。

 日本でもPESの取り組み事例が出てきている。ソニーセミコンダクタ九州の熊本テクノロジーセンター(熊本テック)による「地下水涵養」は、日本での代表的事例だろう。

 阿蘇山を背後に控える熊本市は地下水が豊富な土地柄だ。半導体部品の製造には水が大量に要る。同社が熊本への進出を決めたのは、水資源が豊かな土地だったことが大きな理由だった。

 ところが、東海大学の調査によって、近年、熊本市の地下水量が減っていることがわかった。

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地下から汲んだ水は地下へ返す >>

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