ECO JAPANリポート

2010年8月11日

沖大幹教授のアフリカ現地リポート

「1L for 10L」の現場、マリを訪ねて

沖大幹・東京大学生産技術研究所教授

 つい15年前、世界人口がまだ約57億人だった頃、11億人もの人々が安全な水へのアクセスがなく、長時間の水汲み労働や、下痢などの水系感染症にかかるリスクを冒して安全でない水を飲むことを余儀なくされていた。しかし2008年には約67億人と人口が2割近く増えたにも関わらず安全な飲み水へのアクセスがない人口は8億8400万人に減ったと世界保健機構(WHO)と国際連合児童基金(UNICEF)が2010年に報告している。これは、国連のミレニアム開発目標のひとつ「2015年までに安全な飲み水へのアクセスがない人口割合を(1990年に比べて)半減する」に向けた様々な取り組みの賜物であり、草の根NGOから政府機関まで、様々な関係者の地道な努力が実りつつあることを示している。

 しかし、一般市民にとって、世界の水問題は実感が湧かないばかりではなく、例えその解決へ向けた取り組みに貢献したいと思っても、現地まで井戸掘りに行くことができる人は稀だろうし、かといって寄付には抵抗感を覚える人も多いに違いない。そうした中、「1L for 10L」を掲げ、ボトル水の売り上げに応じてアフリカで安全な井戸水を供給する、というキャンペーンをVolvicが始めて2010年でもう4年目になる。よく考えてみれば、別に飲料水でなくとも、ヨーグルトや牛丼の売り上げに応じて安全な飲み水へのアクセスを増やす活動があってもよさそうなものであるが、水で水を、というのはわかりやすい。寄付文化がまだまだ興隆しない日本において、社会的な問題解決に市民が気軽に参加できる道をつけるということからも、なかなかうまいやり方であると以前より注目していた。

お金だを出せば終わりではない企業の社会貢献

 2010年5月、Volvicを日本で販売し、「1L for 10L」キャンペーンを展開しているダノンウォーターズオブジャパンの現地訪問に同行する機会を得た。売り上げの一部を井戸掘り事業に寄付するだけではなく、その効果をちゃんと確かめに行くという態度には、単に水を商売にしていることに対する免罪符としてのキャンペーンではなく、企業の社会貢献を果たそうとする基本姿勢も感じられる。聞いてみると、人事評価ではCSR(企業の社会的責任)活動への貢献も大きく査定されるとのことであり、そうした組織的な体制もじわじわと効いているに違いない。

「1L for 10L」プログラムの支援により作られた井戸に集まった子どもたちが、実際に井戸の水を飲む(撮影/Hisashi Okamoto、2008年5月)
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