日経エコロジーリポート

2010年5月25日

沈みゆくツバルの現状

枝廣淳子の現地リポート

文・写真/枝廣淳子(環境ジャーナリスト)

温暖化で国土が海に沈みつつあるというツバル。昨年の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)でも、早急な対応の必要性を訴えていた。そのツバルに環境ジャーナリストの枝廣淳子氏が飛んだ。

 南太平洋に浮かぶ小国、ツバル。海岸のヤシの木の根元を洗う波の映像などで有名なこの国は「沈みゆく悲劇の島」と呼ばれ、「温暖化の被害者」の代名詞だ。一方で、中部大学の武田邦彦氏のように、「ツバルは沈んでいない。子どもたちにウソを教えるな」という主張もある。

フナフチ環礁の西端に位置する無人島、テプカ島では海岸浸食で多数のヤシの木が倒れている

 実際のところはどうなのだろう。ツバルは本当に沈んでいるのだろうか。

 今年1月下旬、NPO法人「Tuvalu Overview」が主催するツバル・エコツアーに参加して現地を訪れ、街の人々やツバル首相に話を聞いた。

ツバルの首都フナフチのメインストリート。子どもが裸足で駆け回る傍を自動車やバイクもゆっくり走っている

 ツバルは、ポリネシアに位置する9つの島からなる小国だ。国土の総面積は約26km2、人口は1万人弱。首都フナフチがあるフォンガファレ島に人口の約半分が住む。

 フィジーで飛行機を乗り換えて2時間、コバルトブルーの海にリボンを丸く浮かべたような環礁の島々が見えてくる。平均海抜1.5〜2mという平らで細く伸びる、緑の色濃いフォンガファレ島にプロペラ機は到着した。

 第一印象は、「人々は海面上昇で逃げまどっているわけじゃないんだ」。マスコミが作り出したイメージをそのまま受け取っていた自分たちに気づく。実際のツバルは、幸せそうな人々が誰にもにこにこと笑顔で声を掛けてくれる、温かくて素敵な島だ。で、この島が沈んでいる?

 島が「沈む」とはどういうことか。実は「沈む」という言葉は、島と海との相対的な関係を表している。お風呂に入っていて、お湯を足せばあなたは「沈んでいく」。お湯を足さなくても、「肩まで浸かりなさい」と言われて体を下げれば、やはり「沈んでいく」。そして、海辺の砂の城が波に削られていくように、地表が削られても「沈んでいく」。

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