文/山根小雪(日経ビジネス)
革新的な新型太陽電池「量子ドット太陽電池」が注目を集めている。シリコンなどの半導体を使う従来の太陽電池に、ナノテクノロジーと量子力学の新理論を適用。驚異的な性能を実現できる可能性を秘めた新技術である。
現在主流の結晶シリコンを使う方式では、太陽光を電気に変える(※)変換効率は、30%が限界といわれる。ところが量子ドット太陽電池は理論的には60%もの高効率が可能だ。研究段階だが、東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長の荒川泰彦教授とシャープのグループなどが16%台を確認している。
量子ドットとは、大きさが約10nm(ナノは10億分の1)のナノ結晶構造のこと。半導体でできた微小な“箱(粒子)”で、中に電子を閉じ込めてある。太陽電池は、半導体に光が当たり電子が動くことで電気が流れる。シリコンなどを使う既存の太陽電池は、光が当たると、半導体の中で電子が自由に動き回る。この電子のうち、電極に移動した電子の分だけを電気として取り出せる。電極に移動しない分は電気として取り出せないため、発電効率が下がる。一方、量子ドットに閉じ込められた電子は、電極へ効率良く移動する。
それだけではない。量子ドットは、太陽光が持つ様々な波長の光を余すところなく発電に利用(吸収)できる。太陽電池は、素材によって吸収できる光の波長が異なる。特に赤外線など短い波長の光は吸収しにくい。量子ドット太陽電池は、同じ素材でも、量子ドットの大きさを変えると、吸収する光の波長が変わる。量子ドットを高精度に作れれば吸収する光の波長を制御でき、発電効率が高まる。
(※)変換効率:太陽電池が受けた光エネルギーのうち、電気として取り出せる割合。光が太陽電池の表面で反射されたり、太陽光を受けて一度動き出した電子を電気として取り出しきれなかったりするロスが発生する

●量子ドットはナノサイズの“箱”
量子ドット太陽電池は電子をナノサイズの箱に閉じ込めることで発電効率を高める



















