取材・文/林愛子
車載用リチウムイオン電池は量産化に向けた動きが活発化しているものの、依然として発展途上の技術である。材料も形状も性能もさまざまで、各社は最適解を模索しながら開発を続けている段階だ。そんななか、ドイツは電気自動車(EV)とリチウムイオン電池の国際標準化に向けて動き始めた。
リチウムイオン電池の4R事業
2009年10月の東京モーターショーに合わせるように、日産自動車は住友商事と共同でリチウムイオン電池を二次利用する事業を検討していることを明らかにした。両社はこれを“4R事業戦略”と呼んでいる。回収したリチウムイオン電池を再び自動車用として使う「再利用」、家庭用蓄電池など異なる用途向けに仕立てる「再販売」、パックを分解してセルの状態に戻してニーズに合わせてパッケージし直す「再製品化」、原材料の回収と再利用を目的とする「リサイクル」の頭文字をとったものだ。
日産がこの事業を検討する背景には、リチウムイオン電池のコストの問題がある。三菱自動車工業の電気自動車「iMiEV」の場合、車両価格459万9000円のうち、電池コストが約半分の200万円程度を占めるとされる。自動車用リチウムイオン電池は市場創成の段階にあり、高価にならざるをえない。日産としては、将来的にある程度の回収量が見込めれば、その分、新品の価格を抑えられると考えているようだ。安くできれば普及に弾みがつき、量産効果による早期の低コスト化も期待できる。
日産は、2010年後半に投入する電気自動車「リーフ」の車両価格について「車格が同等のガソリン車と競争可能な価格」と表明している。だとすれば、この価格には電池は含まれていないと考えるのが妥当だろう。つまり、電池価格は車両価格から切り離して、別途、リース扱いになる可能性が高い。所有権が移転しないリース方式であれば、回収も容易になる。検討を進めているリチウムイオン電池の4R事業構想とも合致する。
こうしたビジネスモデルが考えられるのは、リチウムイオン電池が高い残存利用量を誇るからだ。ニカド電池やニッケル水素電池の場合、放電が不十分な状態で再充電を繰り返すと、「メモリー効果」による劣化が進んで本来の容量で充放電できなってしまう。しかし、リチウムイオン電池ではこの心配がないのである。リチウムイオン電池も徐々に充電可能容量が減少する「経年劣化」はあるものの、その影響は比較的軽微とされる。
日産が米国で行ったLA4モードによる走行テストでは、5年間で約2割の容量低下が認められた。テストに使ったリチウムイオン電池は電池容量24kWh、航続距離は160km。5年後に2割減となると、電池容量は20kWh弱、航続距離は130km弱である。数字を見ると目減りした印象だが、劣化は容量だけで、出力にはほとんど影響がない。つまり、加速性能や最高速度は変わらないので、ドライバビリティには大きな変化がないのである。
航続距離が130km程度確保できれば、近距離移動用としては問題ないだろう。「性能はほどほどでいいから、値段が安い方がいい」と考えるユーザーも大勢いるに違いない。彼らが中古車感覚で中古の電池を選ぶ可能性がある。また、電池容量20kWhは一般家庭の約2日分の電力消費量に相当することから、家庭用蓄電池として再利用するには十分な価値があると言える。




















