取材・文/林愛子
エコカーに欠かせない技術であるリチウムイオン電池の周辺がにぎやかだ。パナソニックは民生用リチウムイオン電池で世界首位の三洋電機を子会社化し、プジョー・シトロエングループはリチウムイオン電池搭載の電気自動車を擁する三菱自動車工業に出資を提案中だ。業界では一体何が起きているのかだろう。
巨大バッテリーメーカーの誕生
12月10日、パナソニックは三洋電機の株式公開買付(TOB)が成立したと発表した。予定よりも時間がかかったのは、二次電池(充電池)など複数の事業について、国内外の競争法に抵触する懸念があったためだ。
パナソニックは、1996年にトヨタ自動車と車載用ニッケル水素電池(NiMH)の開発、製造、販売を行う合弁会社「パナソニックEVエナジー」を設立した。同社のニッケル水素電池は歴代の「プリウス」やレクサスのハイブリッド車(HV)などに搭載されてきた。
一方の三洋電機もニッケル水素電池の大手で、こちらはホンダ「インサイト」などに供給している。今回のTOB成立で、三洋電機を併せたパナソニックグループはハイブリッド車用ニッケル水素電池で圧倒的なシェアを持つことになった。
また、携帯電話やノートPC、デジタルカメラなど民生用リチウムイオン電池(LIB)も両社が力を入れてきた分野である。
民生用リチウムイオン電池で世界トップの三洋電機は、民生用として最もスタンダードな円筒形「18650」(直径18mm×高さ65mmの意味)を直列および並列でつなげたバッテリーシステムを2010年から発売する。製品化されるのは太陽電池とのハイブリッド化が可能な蓄電システムと、電動バイクなど軽車両動力用システムの2種類だ。パナソニックも、同じく「18650」を使って電気自動車(EV)用にも使える大型モジュールを開発している。
ハイブリッド車や電気自動車の性能の決め手となる二次電池の巨人となったパナソニック・三洋電機グループ。その事業戦略は世界の自動車メーカーのエコカー戦略を左右することになる。
パナソニックは大阪府にリチウムイオン電池工場を建設中で、2010年4月から携帯機器向けなど民生用セルの生産を始める。
三洋電機は2010年7月の竣工を目指して、兵庫県の加西事業所に新工場を建設中だ。ここでフォルクスワーゲン(VW)グループなどに供給するハイブリッド車用リチウムイオン電池を生産する。
パナソニックは民生用、三洋電機は車載用という単純な話ではないとしても、両社の持つ有形無形の資産を存分に生かせばリチウムイオン電池市場で盤石の地位を築けるだろう。
トヨタが60%出資するパナソニックEVエナジーの今後も気になるところだ。当面は3代目プリウス用ニッケル水素電池の生産で手いっぱいだが、いつまでも“ニッケル水素電池工場”であり続けるわけにもいかない。何より、最近リース販売が始まった「プリウス プラグインハイブリッド」には、ニッケル水素ではなくリチウムイオン電池が搭載されているのだ。
実は、トヨタにはパナソニックEVエナジーの開発部隊とは別に、中長期戦略を踏まえた電池開発部隊が社内に置かれている。トヨタの商品開発本部チーフエンジニア、小木曽聡氏はその意義をこう語る。
「社内で電池開発に取り組むことで、自動車側が電池に対して要求する条件と、電池の特性をどう組み合わせたらいいのかがよく分かる。電池メーカーと議論する場合でも、我々がある程度電池のことを分かっていれば話が早い。電池は将来の自動車のコア技術。自動車メーカーとしてその開発に携わるべきだと思っている」
プリウス成功の裏にこうした電池戦略があったのは間違いないだろう。




















