生物多様性 本音リレートーク
足立直樹(あだち・なおき)
レスポンスアビリティ代表取締役、企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長
レスポンスアビリティ代表取締役、企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長
生物多様性の保全などを中心にCSRについてのコンサルティングを行う会社をやっています。また、2008年4月にできた企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)の事務局長をしています。博士課程修了後に、国立環境研究所に就職し、マレーシアの熱帯林のプロジェクトに参加しました。フィールドは、マレー半島の低地熱帯林。熱帯林の天然更新や土地利用の変化を調べるのが主なテーマでした。1999年〜2002年はマレーシアの森林研究所(FRIM)に派遣となり、マレーシアを中心に周辺諸国の自然を堪能。すっかり熱帯の気候とペースが身体になじむものの、このままでは熱帯林もあっという間に無くなってしまう。けれど、基礎研究を続けるだけではいかんともしがたいと思い、帰国を機に研究者をやめ、コンサルタントに転身しました。
学生時代はかなり熱心なバードウォッチャーで、双眼鏡と巨大な望遠レンズを付けたカメラを持って全国を飛び回っていました。大学では理系の学部に入ったものの、数物系には向いていないとすぐに悟り、趣味の延長で生物系に転向、大学院では植物生態学を専攻しました。生理生態学というマニアックな分野で研究をしましたが、おかげで生物体内の小さなところから、生態系の大きな仕組みまで、様々なスケールで考えることができるようになったと思います。
始めのうちは「生態系」や「生物多様性」と言ってもまったく反応のなかった日本企業も、2007年ぐらいから次第に「生物多様性って?」とたずねられることが多くなりました。2006年に会社を設立した当時は生物多様性はほとんど「仕事」にはならなかったのですが、昨年ぐらいからはようやく仕事の一部になってきました。
最近は鳥を見に行くことはもうほとんどなくなってしまいましたが、休みの時にはサンゴ礁の暖かい海に潜って、色とりどりのフィッシュウオッチをするのが趣味になっています。確かに熱帯林の多様性もすごいのですが、海の中はそれとはまったく異次元の多様性で、驚かされたり、魅了されることの連続です。そして、人知だけなく、人間一人ひとりの物理的な力や能力の限界も常に意識させられます。
個人ブログの「サステナ・ラボ」では、生物多様性をはじめとして、持続可能な社会に関わる話題についてほぼ毎日情報発信をしています。
草刈秀紀(くさかり・ひでのり)
野生生物保護学会理事、WWFジャパン
野生生物保護学会理事、WWFジャパン
日本大学農獣医学部拓殖学科で学んだ学生時代、様々な団体(WWFジャパン、日本自然保護協会、日本野鳥の会、日本ナチュラリスト協会、東京動物園協会、日本両生爬虫類学会、日本野生生物研究会、動物愛好会、昆虫愛好会など)の会員になりました。特に、日本自然保護協会のボランティア組織である「カモシカ食害防除学生隊(現在、かもしかの会)」でニホンカモシカの保護活動に取り組んだのが、日本の野生動物を守る先駆的な活動でした。大学卒業後、ワーキングホリデー制度を利用し、オーストラリアのシドニーに渡り、1年間滞在し、オーストラリア全土の主要都市や国立公園を回りました。帰国後、日本自然保護協会の嘱託職員として環境庁(現:環境省)の委託業務「自然解説活動の事例集の収集」を担当した後、WWFジャパンの職員となりました。
WWFジャパンでは南西諸島の保護事業を担当し、環境庁委託業務「南西諸島における野生生物の種の保存に不可欠な諸条件に関する研究」を受け持ちました。1993年〜95年にWWFインターナショナルの南太平洋プログラム事務局(当時、シドニー)に赴任し、ソロモン諸島、フィジー、バヌアツ、トンガ王国などを訪れ、特にソロモン諸島は自然環境の保全プロジェクトで3回訪れ、島民と交流しました。ソロモン諸島は、日本の島社会、村社会の生き方が残されています。
98年より愛知万博問題を担当。万博による開発が中部地方で貴重な里山「海上の森」を破壊する問題がBIE(博覧会国際事務局)に知れることとなり、全国的に話題に上りました。万博の問題を解決するために6者協議(WWFジャパン、日本自然保護協会、日本野鳥の会、通産省、愛知県、博覧会協会)を行い、合意事項をまとめました。情報公開と合意形成の代表例でもある「愛知万博検討会議」設立にかかわりました。
最近では、生物多様性基本法の制定や生物多様性条約市民ネットワーク(CBD市民ネット)の設立に向けて中心的に活動しています。また、野生生物保護学会フォーラム誌編集長や、IUCN日本委員会副会長も務めています。
現在、WWFジャパンで生物多様性国家戦略、鳥獣保護法問題、種の保存法問題、外来種法制度問題、自然公園法問題、エコツーリズム推進法問題、野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク世話人、Sネットワーク連絡会(市民団体のネットワーク)座長、G8サミットNGOフォーラム環境ユニット生物多様性イシューリーダー、「生物多様性保全関連法」作業部会長、などを担当しています。
個人的に、「ツキノワの会−人と野生動物との共存を考える−」を1985年に10人のメンバーで設立し、埼玉県秩父、栃木県足尾などで野生動物の保護活動を続けています。現在会員は約250人です。また、「自然保護とは」という個人ブログのページを持っています。
小谷 真由美(こだに・まゆみ)
富士通 環境本部環境企画統括部
富士通 環境本部環境企画統括部
富士通は生物多様性第9回締約国会議(COP9)の「ビジネスと生物多様性イニシアチブ」にリーダーシップ宣言をしています。現在、本業とCSRの両面で、生物多様性を保全する方策を検討中です。私は高専・大学で電気工学を学び、富士通に入社してから約8年、携帯電話基地局の開発・設計に携わってきました。2006年末に環境本部に異動してからは、植林や学校での環境出前授業などの環境社会貢献活動や、生物多様性を担当しています。生物多様性に関することでは、昨年、マレーシア・ボルネオ島で熱帯雨林再生のための植林や、茨城県の里山での外来種駆除の企画・運営を行いました。
大学生の時に、レイチェル・カーソン著の「沈黙の春」を読んで以来、環境問題にうっすらと関心はあったのですが、特にこれといった活動もせず、普通の会社員生活を送っていました。5年前にヨガを始めたことや、映画「ガイア・シンフォニー」を見たのをきっかけに、自分の体の健康、地球の健康、人の意識と行動の関係やスピリチュアルなことにも興味を持つようになり、環境問題にも新たに関心を持ち始め、3年前に環境本部への異動の希望を出し、今に至っています。
石川県加賀市の出身で、関東に出てきて10年たちますが、最近、地元に帰るたびに、「里山の原風景」とも言うべき風景を見て、私は恵まれた環境で育っていたんだなあと、つくづく実感しています。
高山 百合子(たかやま・ゆりこ)
大成建設 技術センター 土木技術研究所水域・生物環境研究室海洋水理チーム 副主査研究員
大成建設 技術センター 土木技術研究所水域・生物環境研究室海洋水理チーム 副主査研究員
大成建設の技術センター、海洋水理担当の部署に16年所属しています。干潟や藻場の調査、造成実験をベースに、生物生息地環境の整備方法や評価する方法について研究しています。研究や実務のフィールドは、水底にヘドロが堆積し、水質悪化が進行している内湾や湖沼が多いです。水域の自然浄化能力の強化を研究テーマとして、干潟や浅場など沿岸域の環境再生に関する技術開発に10年ほどかかわってきました。真珠養殖で有名な三重県・英虞湾で、水質・底質悪化の改善策の1つとして、人工干潟の造成技術の開発に従事。生物多様性を生かした環境改善技術の開発を目指しています。
当社でも全社的に「生物多様性」への理解、認識、行動を推進すべく、様々な取り組みが始まっています。しかしながら、私自身、「生物多様性」の社内活動推進などに直接かかわってはおらず、まだまだ受身的な存在です。この好機に自分の言葉で少しでも社内に発信できるようリレートークに参加できればと思っています。今現在、企業として取り組むべきことの意義、いちエンジニアとしての意識、個人(社員)と企業活動のギャップ、のようなことをリアルに感じ取っていきたいと思っています。
林 雄太(はやし・ゆうた)
東京農工大学大学院 修士課程2年(植生管理学研究室)
東京農工大学大学院 修士課程2年(植生管理学研究室)
大学院で植生管理学の分野で研究をしながら、国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」生物多様性プロジェクトや、全国青年環境連盟(エコ・リーグ)、生物多様性条約市民ネットワーク運営委員もしています。それぞれの活動は以下です。【1】東京農工大学大学院 植生管理学研究室
群馬県みなかみ町の赤谷地域で、生物多様性復元のために砂防ダムの一部撤去が計画されています。この砂防ダムによって、植生がどのように影響を受けているのか、一部撤去することによってどのように回復し得るのかを、研究テーマとしています。
【2】国際青年環境NGO 「A SEED JAPAN」生物多様性プロジェクト
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)での重要議題の1つであるABS(遺伝資源へのアクセスとその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分)について活動しているプロジェクトを手伝っています。ABSに関しては、専門的で非常に難しいトピックで、情報や専門家も少なく苦労していますが、これだけ重要な問題が日本ではほとんど認知されていないという危機感で啓発や提言活動をしています。
【3】生物多様性条約市民ネットワーク
COP10/MOP5に向けて、市民(NGO、企業、自治体などを含む)が情報交換し、連携を強化し、海外の市民を受け入れ、条約交渉に市民の声を届けることなどを目的に設立したネットワークです。運営委員の中で唯一の若者として、COP10/MOP5に関する大きな流れと若者の架け橋となって動いています。
【4】ウエブサイト「生物多様性アクションナビ(仮)」制作プロジェクト
「生物多様性には興味があるけど、どんな活動をしたらいいのかわからない」「そもそも生物多様性って何?」。こんな若者の声に応えるウエブサイトを制作しているプロジェクトを手伝っています。
【5】「生物多様性アジアユースカンファレンス(仮)」実行委員
今年8月上旬に名古屋で生物多様性に関する「アジアユースカンファレンス」が開催される予定です。環境省が主催の事業ですが、青年からはエコ・リーグが企画の一部などを担っています。
私の最大の興味は、地球や自然の素晴らしいシステムとその美しさにあります。こんなに素晴らしいものを、人類は大きな改変を施してしまい、さらにその改変によって自分の首を絞めている。なんてLOSE-LOSEな関係なんだ、と思います。地球や自然が大好きなので、自然科学的なことにも非常に興味がありますが、研究だけしていても社会は変わりにくいと思って、色々な活動もしています。
平島 安人(ひらしま・やすひと)
セイコーエプソン 地球環境推進部課長
セイコーエプソン 地球環境推進部課長
セイコーエプソンは2008年6月に発表した「環境ビジョン2050」の中で生物多様性に取り組むことを明言しました。このテーマ推進が私の担当です。企業の本業の中できちんと取り組む方策を検討しています。また社員が自らの言葉で生物多様性について語ることができるようになりたいと考え、社員が自然とかかわりを持つ場を提供することにも取り組んでいます。御柱祭で有名な諏訪大社のお膝元に位置する神宮寺生産森林組合の「神宮寺100年の森」計画への支援を始めましたが、少しでも多くの社員が自然の中に入っていく機会を作りたいです。「何かしたいのだけど、何をしたらよいのか? どうしたらよいのか?」と思っている社員の背中をひと押しできれば、そんなことも考えています。
個人的な活動としては、1998年に仲間とともに森林ボランティアグループ「森倶楽部21」を立ち上げました。昨年よりNPO法人となっています。私自身は信州や日本の森林の間伐をいかに進めるかに関心があり、信州の自然が私たちに恵んでくれるものをこれからも大切にしていきたいと思っています。森林問題に限らず、環境問題全般に首をつっこみ、特に気候変動問題を中心として長野県下での講演活動、啓発イベント、新聞連載コラム執筆、環境NPOでの活動など、あれこれ取り組んでいます。
生物多様性の喪失も気候変動も根っこは同じ、有限の地球という環境の中で太陽の恵みから離れた社会を作ってしまったこと、「循環」を見失ったことに大きな問題があるのではないでしょうか。「足るを知る」、これを追求していきたいと思っています。
藤田 香(ふじた・かおり)
日経エコロジー編集記者
日経エコロジー編集記者
日経エコロジーでは、生物多様性や、温暖化懐疑論など環境問題のウソホントを検証する科学記事のほか、自然エネルギーや環境教育などを担当しています。大学時代に物理学を勉強した後、日経BP社に入社し、「日経エレクトロニクス」で電子デバイスなどの記事を担当しました。その頃、新田次郎の小説や映画「植村直己物語」と出会い、山登りにのめり込むようになりました。勢いあまって会社を休職し、米国で地質学を1年間勉強。その間にバックパックで米国の国立公園や田舎町の暮らしを見て回りました。山登り熱はしばらく続き、キリマンジャロやヒマラヤに登りました。
帰国後、異動を希望して「ナショナルジオグラフィック日本版」編集部に移り、7年間携わりました。世界の大自然の驚異を取り上げた英語版の翻訳編集に携わる一方で、日本版オリジナル記事の取材のため日本各地の多様な自然や文化に触れ、熱心に活動する科学者や写真家、市民団体と知り合いました。
出身は富山県で北アルプスの麓という土地柄から、多様な南より、どちらかといえば生物多様性の乏しい「岩と雪の世界」に強く引かれます。寂寞とした北でギリギリの世界に生きる固有種などを見ていると、地球上に生物が生きられる場所がいかに限られているかを痛感します。生物も46億年の地球の歴史の一部という感じを抱いており、生物と地質や気象や人々の暮らしとのつながりに関心を持っています。



















