ECO JAPAN Book Review

2011年9月28日

宇宙太陽光発電は「遠くない夢」

『宇宙太陽光発電所』

宇宙太陽光発電−−。地上では、再生可能エネルギー発電による電力の全量買い取りを電力会社に義務づける「再生エネルギー特別措置法」が2011年8月に成立し、ようやく太陽光発電が本格的に普及する可能性が出てきた。だが、太陽光発電は発電の不安定さが電力の安定供給を妨げるという指摘がある。この弱点を補うために、雨も曇りもない宇宙で発電して地球に持ってきてしまおうという壮大な研究が進んでいる。研究の第一人者である松本紘・京都大学総長が著した『宇宙太陽光発電所』のポイントを、太陽光発電の超電導送電の研究開発でも知られる藤原洋・インターネット総合研究所所長(ナノオプトニクス・エナジー社長)に聞いた。


−−この本のテーマである「宇宙太陽光発電」を一言で説明すると、どんなものですか。

藤原 コンセプトは明快です。雨も曇りもない宇宙空間に静止衛星を上げて、安定的にエネルギーをつくり、マイクロ波で地球に送って、エネルギー需要地に近いところで受ける。安定した再生可能エネルギーの発電です。

宇宙太陽光発電所のイメージ
出所:京都大学
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藤原 タイトルを見ると壮大な夢を語っている本ではないかと思いますが、実は現在の社会問題を詳しく分析しています。日本をはじめ先進国が直面している課題を解決する決定的なビジョンを示している本だと思いますね。警告と同時に具体的なシナリオを示した書籍であると。

 1つは人口爆発の問題。日本だけを見ると少子高齢化ですが、世界的に見ると人口は増えていきます。もう1つは南北問題。資源は貧困地域にあって、消費するのが先進地域という構図。それがいま崩れつつある。日本をはじめとする先進国は基本的に資源がなく、資源国から輸入し加工することによって繁栄する経済モデルが続いてきた。これは、世界の人口の6分の1が幸せになるシナリオだった。21世紀は残りの6分の5の人たちも幸せになる必要がある。科学技術は世界の限られた人のためにあるのではなく、世界のためにあるべきだし、実際に世の中はそう動いています。ところが、エネルギーや資源は明らかに枯渇していく。この問題は今から考えておかないと大変なことになります。

−−日本は原発事故問題があり、エネルギー問題は深刻ですね。

藤原 原子力エネルギーがいま3割、10年後に4割、20年後に5割というエネルギー戦略は見直さざるを得ません。短期的には原子力は必要だろうが、長い目で見たら原子力の安全性の問題がどうであろうと、資源の枯渇問題からすれば深刻なわけです。ざっくり石油が40年、石炭が155年、ウランが85年で枯渇する可能性が高いと言われている。そうした中で著者は、サステナビリティ(持続可能性)では甘い、サバイバビリティ(生き残り)が必要であると問題提起している。そのサバイバビリティのために有効な手段が宇宙太陽光発電であるというのが本書の主張です。

 100年スパンで考えれば、化石燃料もウランも枯渇する。孫の代に何を残すかを考えれば、多かれ少なかれ再生可能エネルギーに転換しなければならないことは世界中の人が認識しています。ただ、再生可能エネルギーはどれも一長一短があります。太陽光と太陽熱は昼間しか発電しないし、風力は風が吹かないとだめだし、地熱は限られている。決定的な再生可能エネルギーはない。火力と原子力をメインにした方がましだと考える人もいるでしょう。しかし、宇宙太陽光発電は極めて安定的です。

−−本書を読むと、2035年に100万kW(原発1基分)を宇宙太陽光で発電するといった具体的な道筋を示しています。

藤原 私たちが少年のころ、リニアモーターカーは遠い未来の夢でした。だが、2025年にJR東海が株式会社として事業化することになり、実用化が見えてきています。宇宙太陽光発電は、ほとんど同じイメージです。

著者:松本紘
発行:2011年6月
発行元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
価格:1260円
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