水不足や河川の汚染が深刻化する中国で、これまであまり語られていないもう1つの水危機がある。地下水汚染である。地下水はいったん汚染されると、浄化には莫大な時間とコストが必要になる。中国には、地表水を管理する法律はあっても、地下水を管理する法律や制度は未整備。その結果、今、この瞬間にも汚染源に対する根本的な解決策が施されないまま、中国の地下水は汚染され続けている。
地下水と風土病
10数年にわたり淮河流域の環境保護活動に従事してきた環境NGOの「淮河衛士」。会長の霍垈珊さんは、この流域でガン発症が異常に高い村が出現し、不妊や発育不全が多発している事態を報道やインターネットを通して中国内外に明らかにし、救援を呼び掛けた。こうした健康被害の多くは、飲用などに利用している地下水の重金属や化学物質による汚染が原因と見られる。「次の世代の生命や健康にまで関わる大問題」と霍垈珊さんは告発する。
かつて中国の河南省などでエイズの多発が明らかになった「エイズ村」の問題と同じように、「ガン村」の存在は世界に衝撃を与えた。
中国の都市部が直面している水不足や水源汚染はよく知られるが、中国で進行している水危機は河川や湖沼など地上だけではない。地下水の危機が深刻さを増している。汚染された地下水が中国の人々の健康を確実にむしばんでいる。
地下水が人々の健康に及ぼす影響については、以前から中国でも大きな問題になっていた。
2004年10月に国家発展改革委員会や衛生部(日本の省に相当する官庁)、財政部が共同で発表した「全国重点地方病計画(2004〜10年)」の中で、地下水などが原因と考えられる健康被害の実態を明らかにしている。これによると03年末時点で、歯のフッ素症(*1)患者が3877万人、骨のフッ素症(*2)が284万人、ヒ素中毒が原因の認知症が9686人、カシン・べック病(*3)が81人、潜在性克山病(*4)が2万9900人、慢性克山病が1万900人にのぼる。



















