足達英一郎 サステナブルな視点

2010年7月29日

スマートシティの「もう一つの選択肢」

 新聞報道によると、23日に閉会した日本経団連の夏季フォーラムで、日本企業の技術力を結集した未来都市構想を盛り込む方針が示されたそうだ。「特区制度も前提にしながら最先端技術をさまざまに盛り込んだモデル都市を作る」という意気込みで、今後市町村に参加を募るという。

 世界では、いま「スマートシティ」構想の大ブームだ。百を越えるプロジェクトが進行しているといわれ、「スマートシティ」は新興国のインフラ需要の旺盛さを象徴するシンボルといえる。

生活スタイルのモデル都市はできないか

 今年5月に訪中した日本経団連のミッションに対して、中国側からは、「国家プロジェクトとして進めている循環型経済モデルの実験都市である唐山市の曹妃甸工業区開発を戦略的互恵関係の協力プロジェクトとして、日本政府の支援とともに、日本企業にぜひとも手を貸してほしい」との要請があったと伝えられている(日本経団連タイムス No.2997-01)。

 ミッションは、現地も訪れ、唐山市幹部とも意見交換。唐山市の趙勇書記からは、「これは中国の大きな夢である。この夢を日本経団連とともに実現したい」との要望を寄せられたということだ(日本経団連タイムス No.2997-01)。5月末に来日した温家宝首相も、中国政府が環境モデル都市として開発を進めている唐山市の曹妃甸工業区などへの日本企業の投資を求めたという。

 「海外に売り込める日本技術のショールームを作る」。これには大きな意義があると思う。しかし、同時にもう一つの「モデル都市づくり」をここでは提案したい。それは、技術導入ばかりではなく生活スタイルの変革によって、住民一人あたりの環境負荷をどこまで低減できるかに挑戦するモデル都市である。

 例えば、1970年から3.3倍以上に膨れ上がってきた電力消費量のトレンドを反転させる糸口を探索するために、分散電源を主軸に発電可能容量から電力利用のあり方を考えるモデル都市。中心部の乗用車利用を徹底的に排除し、公共交通機関や自転車、徒歩利用を最優先させたモデル都市。一次産品の地産地消を原則として、鉄や化成品の利用を最小限にして物質循環の観点からも地域的な自立を志向するモデル都市−−といったイメージだ。

 90年代の初頭に米国アリゾナの砂漠に人工閉鎖生態系「バイオスフィア」をつくり、その中で男女8人の科学者が2年間にわたり生活するという壮大な実験があった。記録によれば、生活は不便を極め、科学者たちは忍耐の連続だったそうだ。ここで提案するのは、そこまで過激な実験ではない。しかし、簡素清貧の中でもどこまで「安心」を感じながら暮らしていけるのかという挑戦を試みる街づくりが構想されても、そろそろよいのではないかと思う。

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