山口光恒の『地球温暖化 日本の戦略』

2010年3月9日

相次ぐ政治家・メディアの誤認 信頼回復に向けたIPCCの課題

科学とIPCC

政策決定とIPCCの役割

 私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る──ボルテール

 昨年来、科学とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の関係が新聞紙上でも大きく取り上げられ、IPCCに対する信頼が揺らいでいるようにも思える。その代表的な例が、英イーストアングリア大学の気候調査部門から漏出した膨大な電子メールの内容を巡る疑惑であり、ごく最近では、ヒマラヤの氷河消失に関するIPCCの記述の基となる文献の信頼性の問題である。これらはいずれも、温暖化の科学、あるいはその影響についての問題である。他方、政策決定と(科学としての)IPCCの役割についても看過できない誤解がある。筆者は、たまたまIPCC第3次および第4次評価報告書の執筆に、代表執筆者(リードオーサー)の一人として参加した経験を持つ。今回の事件を機に、科学とIPCCの関係について考えてみたい。まずは、政策決定とIPCCの役割の誤解についてから始めよう。

 筆者がIPCCの第3次評価報告書の代表執筆者として、初めてIPCCの会議に参加したのは1998年6月の末、場所はドイツの片田舎、バッド・ミュンスターアイフェルのホテルであった。

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