村沢義久:「燃やさない文明」のビジネス戦略

2010年3月3日

電気自動車が促す競争のフラット化 国内中小企業にもチャンス

巨大産業が激震に見舞われている。20世紀の文明をリードしてきた自動車産業である。“王者”米ゼネラルモーターズ(GM)は2008年秋、リーマンショックの直撃を受け経営危機に陥り米国政府の監督のもとに再生中である。クライスラーも同様である。「ビッグスリー」は死語になった。一方で、元気な新興電気自動車(EV)メーカーが続々と名乗りを上げている。自動車業界の地図が塗り替わるだけでなく、産業構造そのものが大きく変わる可能性がある。

常識破りの新生児たち

 GMに代わって販売台数で世界一の座についたトヨタは、栄冠を手にしたのも束の間、2009年秋には降ってわいたようなリコール問題で内外の厳しい批判にさらされることとなった。

 アクセルの不具合問題に端を発し、「絶対」とまで思われたトヨタの品質管理と危機に対する姿勢に疑いがもたれているのである。特に、「プリウス」のブレーキシステムは、これまでのエコカーの主役であったハイブリッドカーの重要な技術であり、その不具合はトヨタのエコカー戦略自体の信頼性を失わせかねない深刻な事態だ。

 このように「20世紀型の巨人たち」が苦闘する中で、21世紀の新天地を疾走する自動車メーカーもある。2010年1月29日、電気自動車ベンチャーの米テスラ・モーターズは新規株式上場計画を米証券取引委員会(SEC)に登録した。2003年設立のテスラの従業員は、現在約500人。上場が今年中に実現すれば設立からわすか7年での快挙となる。

 米国での自動車会社の上場は1956年のフォード以来となる。20世紀型の自動車文明はそのフォードによる「T型モデル」から始まった。米国ではテスラ以外にも、フィスカー・オートモーティブやアプテラ・モーターズなどが、ユニークなEVやプラグインハイブリッドカーで自動車産業に参入しようとしている。こうした新生企業群が21世紀型の新しい文明を形づくるのかも知れない。

 上場による調達額は約100億円になると予想されている。テスラはすでにダイムラーから出資(10%)を受けているし、米国、エネルギー省(DOE)からも4億6500万ドル(約450億円)の低金利融資を授与されることになっている。今回の上場による調達資金を加えると研究開発資金もさらに潤沢になる。経営的にも安定しそうであり、パソコンにおける米アップルのように新しい歴史をつくることは間違いない。

 テスラで驚くのは、創業したのがIT技術者たちであり、いわゆる「自動車の専門家」ではないことである。

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