2009年08月19日

川島良彰:おいしいコーヒーの秘密―生物多様性の価値

なぜ、コーヒーが森や生態系を守るのか

コーヒーが持続不可能なんて?!

 1990年代中ごろ、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA:Specialty Coffee Association of America)の年次総会に出席した際に、初めて「サステナブルコーヒー(持続性可能なコーヒー)」という言葉を聞いた。

 サステナブルコーヒー?

 コーヒーは、農園に行けばいつでも青々とした葉を付け、精選工場では大量のコーヒーが加工されている。日本のどこのスーパーでも自家焙煎店でもコーヒーは売られ、コーヒーショップでも自動販売機でもコーヒーは手に入る。

 「コーヒーの持続が不可能なことなんてあるのか!」――これが、僕の受けた最初の感想だった。

 だが、僕にその話をしてくれたアメリカのコーヒー業界の友達は、彼自身も誰かの受け売りだったようで僕の率直な疑問には答えられず、かわいそうな生産者の話に終始した。

 その後、この言葉はあまり聞かれなくなった。なぜなら、1997年に突然コーヒーの国際相場が現在の3倍近い価格まで急騰し、消費国のコーヒー業界は生産国のことなど考える余裕がない状況に追い込まれ、生産国は高値に浮かれて増産に突き進んだからだ。

 しかし、このころ既に、コーヒーの特性を生かしながら生物多様性保全に取り組み始めた団体がいた。それが「コンサベーション・インターナショナル」「スミソニアン渡り鳥センター」「レインフォレスト・アライアンス」などである。彼らは生物多様性を守り、同時に現地の人々の生活を向上させるために活動している。

 なぜ彼らはコーヒーに着目し、自分たちのミッションや活動の中にコーヒーを取り入れたのか? それは、コーヒーが数少ない日陰で育つ農作物だからだ。

 破壊された原生林の回復や、二次林(伐採や災害で破壊された後に再生した森林)の保護をするとき、植樹だけしても目的は達成できない。地元の人々の生活が安定し、食べていけるようにならなければ、彼らは薪や家を作るために木を切ったり、食物を得るために狩りをするしかない。それでは再び森は破壊されて生物も減少してしまい、森林の回復にはつながらない。

 そこで森の木々の下に日陰で育つコーヒーを一緒に植えると、地元の人々は換金作物としてコーヒーを育てながら、森を守っていけるようになる。これをシェード・グローン(日陰栽培)という。

グアバの実を食べる鳥(コンサベーション・インターナショナル コーヒープログラムの農園で撮影、コスタリカ)
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コスタリカのレインフォレスト・アライアンス(RA)認証農園 アキアレス農園内の川。RAでは、河川の両岸に手を加えてはいけないという規則がある
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