石弘之:「地球危機」発 人類の未来

2009年7月24日

始まった農地の争奪―中国や産油国が獲得に走る“食料権益”

 地球にじわじわと食料危機の影が忍び寄っている。それをもっとも雄弁に物語るのが農地の不足である。すでに世界的に農地の奪い合いが熾烈になっている。今世紀後半には人口増と農地の不足で、深刻な食料不足が全世界を覆うという予測がいくつも発表されている。農地争奪はその前哨戦かもしれない。

農地確保に走りだした中国

 ここでも震源地は中国である。中国が地下資源やエネルギー資源の確保のために、アフリカに活発に進出していることはよく知られている。同時に、アフリカで盛んに農地を買い集めたり、借り上げたりしていることはあまり知られていない。これが中国政府の主導によることは、今年2月に胡錦濤国家主席がアフリカを訪れた際、各国との農業支援の協議のなかに農地の獲得交渉が含まれていたことからもうかがえる。

 中国がこれまでにアフリカで確保した農地のなかでは、コンゴ民主共和国(旧ザイール)での280万haが突出している。日本の農地の6割にも相当する。外国にこれほど広大な土地を提供するのは、世界的にみてもほとんど例がない。

 中国はザンビアとも、200万haの農地借用の交渉をしている。これと並行して農業移民も送り込んでいる。ザンビアには中国人経営の農場が20カ所以上あり、河南省や江西省からの農業移民が多いという。すでに首都ルサカで売られる卵や鶏肉の4分の1は中国人が生産しているといわれる。

 中国のウェブサイトにも、アフリカへの農業移民の募集や現地での豊かな生活ぶりが紹介されている。すでに、100万人を超える中国人農業労働者がアフリカで働いているという推定もある。

 ただ、中国の存在感が急増するとともに、一部では反中国の動きも表面化している。3年前には中国がザンビアで買収した銅鉱山で、賃金未払いがきっかけで労働者のデモが暴動化している。英『エコノミスト誌』(09年5月23日号)によれば、中国はモザンビークの農地を取得するために8億ドルを提示したが、国民の反発から交渉はまとまらなかったという。

 欧米の投資ファンドも、中国の対外投資が資源・エネルギー分野から農業分野に拡大しつつあると見ている。急ピッチで進む工業化・都市化によって中国国内で農地が減少していることもこの背景にある。途上国だけでなく、中国は米国でも5億ドルを投じて広大な養豚場を立ち上げた。また、フィリピンやラオスに約210万haを保有しており、中国が全世界で獲得した農地は明らかになっているだけでも数百万haにおよぶ。

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