谷口正次:資源ウォーズと地球と生態系
資源国の悲惨が指し示す人類の危機
見えない真実を知ることから始まる
問題は、鉱物、水、土壌、森林、野生動物など地球の資源を、開発あるいは売買すべき商品、言い換えると利潤を上げるための資産として扱い、開発して商品にするための費用がそのまま価格とされていることである。したがって、開発に際して発生する生物多様性や遺伝資源の消滅など、環境に与えるインパクトは計り知れないにもかかわらず、それは市場メカニズムの対象にならない。そのうえ、これら地球の資源が有限ということを無視しているのだ。先進工業国あるいは新興国によって、発展途上国の枯渇性資源が収奪されたあとに残るのは、荒廃した土地と貧困である。
確かに生物多様性や環境汚染、貧困といったものに価格を付けることは難しい。そのため、このような“不都合な真実”はいまだに外部不経済とされている。これが南北間の衡平性を損ねている。同時に、将来世代に残すべき資源を使い尽くそうとしており、世代間の衡平性をも損ねているわけだ。
サステナブル・ディベロップメント(sustainable development、持続可能な開発)という理念がいまや世界共通の合言葉のように使われている。この理念は、国際連合の「環境と開発に関する世界委員会(WCED=World Commission on Environment and Development)」、いわゆるブルントランド委員会の報告書にうたわれたものである。
「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」という基本理念が、「持続可能な開発(発展とも訳されている)」という一種のスローガンとなって世界に広がっていった。1992年には、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)において中心的な考え方として打ち出された。そして、今日の地球環境問題に関する世界的な取り組みに大きな影響を与えているわけだ。
「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく」とは、世代間の衡平性を意味する。現状の資源開発の実態は全くと言ってよいほど世代間の衡平性を失している。ただただ、国益と巨大な多国籍企業のエゴをむき出しにした資源争奪戦と生物多様性破壊が「今日の世代のニーズを満たす」ためにのみ行われているのである。
2010年10月、名古屋で生物多様性に関する締約国会議(COP10)が行われるが、発展途上国における資源開発に伴って現実に起きている“不都合な真実”を知らぬふりをするのは大いなる欺瞞(ぎまん)と言えよう。
生物多様性というとき、それは企業が事業所を新しく建設するにあたって、生物多様性保護・保全のために周辺の樹木を大切にしましょうとか、外来種を植えないようにしましょうといった次元とは違うということを訴えたい。

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