谷口正次:資源ウォーズと地球と生態系

2009年6月17日

資源国の悲惨が指し示す人類の危機

21世紀のいまも、資源採掘のために大規模な森林破壊や環境汚染が地球上で進行している。環境破壊だけではない。資源開発は先住民の強制移住や児童労働などの人権問題も引き起こしている。そして、しばしば紛争の原因にさえなっているのだ。資源の恩恵を受けている先進工業国の人々がこの問題を直視しなければ、悲惨と危機は増幅するばかりだ。

インディアンが白人に宛てた手紙

 生物多様性という言葉は、英語のbiodiversityの訳であるが、もとはといえばbiological diversityという生物学の用語であったはずである。しかし、biological diversityというと、自然科学の1分野のことで狭義になる。そこで生物に人類とその文化・伝統の多様性も含めるために、biodiversityと短縮して広い意味を持たせた、あるいは上位の概念としたと筆者は解釈している。

 したがって、生物多様性というとき、人間も含めた生き物すべてが共生する世界の多様性を意味することになる。間違っても、人間を中心に置いて保護・保全すべき生物学上の植物、動物が存在するということではないはずである。

 アメリカ・インディアンのスクアミシュ族のシアトル首長が1854年、白人のインディアン虐待と環境破壊に抗議して、当時の大統領に宛てたとされる手紙の次の一節がある。

 「獣がいなくてなんの人間か。もしすべての獣がいなくなれば、人間は魂の大いなる孤独によって死ぬだろう。獣たちに起こることは人間にも起こるのだから。あなたがたの子どもたちに、わたしたちが自分らの子どもたちに教えてきたことを教えなさい。大地こそが母であることを。大地に起こることは大地の息子たちにも起こる。大地に唾することは、自分自身に向かって唾することだ。大地は人間のものではなく、人間が大地のものだ。人間は生命の織物を織る存在ではなく、その中の1本の糸に過ぎない。人間がその織物になすことは、自らになすことと同じなのだ」(『緑の世界史 上巻』クライブ・ポンティング著、石弘之/京都大学環境史研究会訳、P249より)

 本題に入ろう。今、世界で生物多様性(ここでは広義の多様性を指す。以下、断りがない場合は同様)とエコシステムが最も豊かなところは、大雑把に言って、赤道を挟んで北緯35度と南緯40度の間の地域である。

 この地域には、アフリカ、中・南米、東南アジア・オセアニアの多くの発展途上国がある。これらの地域内にある豊かな生物多様性が脅かされているのである。

 地球温暖化が大きな影響を及ぼしているわけであるが、それはあくまで間接的なものだ。しかし、資源採掘のための森林破壊、木材のための森林皆伐、そして油ヤシのプランテーションあるいは農地拡大のための森林破壊は、生物多様性に対する直接的な脅威だ。開発によって森林だけでなく河川とその流域、海域の生態系が破壊されれば、CO2吸収源を失うばかりか、多発する森林火災によってCO2が大気に放出されて、地球温暖化をさらに助長する。樹木その他の植物の組成は2分の1が炭素だからだ。

 このように地球温暖化を促進するとともに、天然資源の開発によって遺伝資源が消滅し、水資源が枯渇し、森の中に住む動物たちも絶滅に追いやられる。そして自然と共生して生活している先住民族の文化・伝統の破壊が進む。こういった自然資源が枯渇に向かい、既に臨界点に近づきつつあり、人類の持続可能性が危ぶまれ始めているわけだ。

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