(写真/筆者撮影)
生物多様性問題とは何か。グローバルな視野からこの問題を考える手掛かりとして、このコラムでは金属資源の採掘との関わりから捕らえていく。金属材料の存在を抜いて、日本の産業や日本人の生活を語ることはできない。その資源採掘が自然環境や生物多様性を傷つけている実態がいまもなお続いている。それは、普段目にすることのない現実である。
第1回目では、文明の盛衰から、森林破壊の教訓を汲み取る。
文明の証が費消した林材資源
いま、世界で生物多様性の保全を叫ぶ声が強まっている。
地球上に残された生態系豊かな土地で、天然資源の採取・採掘と食料生産のための農地拡大などによって森林破壊と環境劣化が進み、現代物質文明の持続可能性が危ぶまれているからである。21世紀に生きる我々は、人類歴史上初めて地球の限界に直面している。
しかし、森林・生態系の破壊は、現代の工業化社会特有の問題ではない。産業革命以降に生じた現象でもない。それは、人類が金属を利用し始めた紀元前3500年頃から顕著な形で始まった。銅や鉄などを精錬するのに必要な燃料を林材資源に求めた。そうして金属を手にした高度な古代文明は、木を切りつくしたその後にどうなったのか…
メソポタミアにおける青銅器時代の幕開け、まもなくエジプト、シリア、アナトリア(現トルコ)、エーゲ海、そしてヨーロッパへとひろがり、やがて紀元前1600年頃には中国に伝わった。
青銅器は銅鉱石にヒ素あるいはレアメタルのスズを加えて製錬する。銅鉱石を高温で溶かしだすためには多量の熱エネルギーが必要である。石油も石炭も利用の仕方を知らない時代、森林を伐採して木炭をつくり燃料としていた。銅だけではない、金、銀、鉛の製錬のためにも多量の樹木が伐採されていた。青銅の製錬法はメソポタミアのシュメール人が発明したといわれている。
青銅器時代の銅の主な産地をあげると、地中海東部のキプロス島(Cyprus)、スペインのアンダルシア地方のリオ・ティント。金はシナイ半島のアカバ湾北のティムナ(Timna)、あるいはエーゲ海北端のタッソス島(Tassos)、そして銀はアテネの南方のローリオン(Laurion)などである。
これらの地域に共通していることは、表土が流出してしまい、石灰岩の地肌が露出し禿山に近いことである。森林が金属製錬用の木炭生産のために伐採されてしまったためだ。



















