益田文和:記憶のデザイン

2009年1月9日

第37回 使い古された傘で作る、色彩豊かなテント

年間1億2000万本の傘を消費する日本人

 この正月も東京はよく晴れた。

 正月とお盆は都内に車が少ないこともあって、晴れると真っ青な空が広がり、昭和30年代初めの記憶を呼び覚ます。あのころはクリスマスに雪が降ることがよくあったのに、その数日後の正月は、不思議なことに晴れた記憶ばかりが鮮明だ。

 それにしても、東京ではよく雨が降る。実際、世界の主要都市の中での年間降水量はトップクラスだそうだ。だからこそ、かえって青空の記憶が鮮明なのかもしれない。

 東京に限らず、日本にいると雨が降れば傘を差すのが当たり前だと思っている。だから海外の都市で雨に降られると、街ゆく人々が傘など差さずに濡れながら悠然と歩いている光景を目にして、不思議に思う。

 ある時、米国のシカゴで乗ったタクシーの運転手に「日本人か?」と聞かれたので、そうだと答えると、「前から日本人に聞いてみたかったんだが、何だってあんたらは雨が降ると誰もかれも傘を差すんだい?」。「そりゃ濡れるのが嫌だからだろ」と私。

 ところがその運転手君は腑に落ちないという様子で、「雨に濡れるとよっぽどまずいわけでもあるのかい? 溶けちまうわけでもあるまいし、ガッハッハ……」と、いつまでも笑っている。どうやら、彼にとっては傘を差す日本人のほうが不思議らしいのだ。

 まあ、実際、日本の傘の消費量は年間1億から1億2千万本というから、毎年1人1本は傘を買っている計算だ。こんな国、世界中どこを探してもほかにない。日本人というのは無類の傘好き、というより“傘依存体質”なのである。

 何しろ、差し出す傘を断って「濡れて行くからいいよ」と言っただけで、月形半平太は英雄になってしまった国なのだ。

今年、2009年の正月。東京はよく晴れた
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